フィリップ・K・ディック著 大瀧啓裕訳。初版。カバーランクC 本体ランクC(ヤケ・シミ)。大ソヴィエト事典1992年度第6版によれば、VALISとはVast Active Living Intelligence System(巨大にして能動的な生ける情報システム)。自発的な自動追跡をする負のエントロピーの渦動が形成され、自らの環境を斬進的に包含し、かつ情報の配置に編入する、現実場における、摂動。擬似意識、意志、知性、成長、環動的首尾一貫性を特徴とする、という。さてVALISとはさらに発狂した神の仕掛けた迷宮によるひっぱるほどに締めつけるフィンガートラップであり、混乱と腐敗を増していく宇宙創成論であり、つまり実り豊かな終末論であり、カバラ、ドラッグ、魔術師シモン、狂気、光と闇の弁証法、パラケルスス、ヘルメス学、そしてなによりも神に酔える哲人スピノザによる、神の唯一の啓示である神は存在しないというソフィア、つまり新グノーシス主義による無神学大全VALIS、さらに幽明の境を越えて不死の人となったディックその人の生誕を告げる遺書である。合掌。